この度、日光大会にて三段位に合格することができました。
日本橋そばの會の諸先輩・会員の皆様のご指導・ご協力のお陰であり、
心から御礼申し上げます。ありがとうございました。

三段位挑戦で掲げた目標は、苦手な包丁の抜本的改良でした。
ところが、始めてみると、包丁の練習は実にやっかいでした。
例えば菊練りは鉢の中だけで何回もできますし、
丸出しや四つ出しの練習もすぐ練り直して練習を積めます。
でも包丁は、全ての課程を経ないと実践練習できません。
しかも1回のそば打ちで、包丁の練習時間は僅か10分程度。
40分は練習したいと思うと、4回も打たなくてはなりません。
これには本当に往生しました。
しかも、諸先輩からの日頃のご指導である、
「屈み過ぎの修正」「両脇を締める」「前方スライドを増やす」
「切り幅1.8mm」などを一気にやろうとしたものですから、
本番10日前には包丁が完全に崩壊してスランプ状態。
スピードは1秒に1切れ、しかも麺線はバラバラ、最悪です。
あれこれ修正を試みながら切っていると、
アッという間に麺体の端まで行ってしまいます。
「もう無くなっちゃった……」と
切った麺線を見つめて何度ため息をついたことでしょう。
簡単に反復再生でき、切る感触が麺体に似ている「被裁断素材」
を開発すれば高値でも売れる、と思うのは私だけでしょうか……
結局、本番1ヶ月前から毎日3回、10日前から毎日4回という、
勤務後の練習としては途方もない回数になってしまいました。
何とか2日前には最悪なスランプからは脱しましたが、
新しい姿勢・切り方が体に浸透しきれずに、
ぎこちなさが残る中で本番を迎えてしまいました。

当日は包丁への不安と緊張で、刷毛・ちりとりを用意し忘れ、
衛生チェック後に取り出して減点されたり、
加水しすぎて「ずる玉」直前だったり、
延しでは右縁を破いて同じ所を3回も補修したり
くだんの包丁は全身に力が入って「ロボット」のように
終始「カクカク」するなど、アップアップでしたが、
切り上がってくる麺線が練習より綺麗だったのが救いで、
何とか最後まで辿り付くことができました。

何よりも、当日は横田会長とK副会長が遠路日光まで
サプライズ応援に駆け付けて下さり、
本当に感激して、元気出るとともに、気合い入りました。
背後からのお二人のテレパシーによる声援のお陰で、
(声を出しての声援・アドバイズ等は禁止されています)
包丁がカクカクしながらも、心が折れることなく、
最後まで「丁寧な切り」に集中することができました。
お二人に見守って頂く中で合格できて本当によかったです。
駆けつけて頂き、本当にありがとうございました。

会場では交流の場、そして緊張を和らげるためにも、
なるべく多くの人と声を交わすようにしました。
直前練習で駒飛びして指を切ってしまった人の苦労話、
包丁だけは得意で目をつぶっても切れると話す人、
二段位を自分と同じ那須で合格した人との再会。
そして、「日本橋そばの会の方ですね、日光では初めてですね」と
何人かに暖かく声をかけて頂きました。

振り返ってみれば、日本橋そばの會に籍を置いていることへの
誇りと喜びを、ひときわ強く実感した一日でした。
皆様、本当にありがとうございました。
今後とも、何とぞよろしくお願い申し上げます。

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