江戸ソバリエ・ルシック認定講座は先日手学も終わり、あとは舌学を残すのみとなりました。「舌学」とは……。江戸ソバリエ協会によると「粋な食べ方」なのだそうです。さて、どのように食べるのが粋なのでしょうか。テキストを見ると詳しく書かれていて、なるほどと感心して読み進めると、最後に六官(目、耳、鼻、舌、肌、心)で味わいましょうとありました。そばの食べ方は奥が深いです。「たかがそば、されどそば」を実感しました。
ところで毎年、私は高橋邦弘先生が催す年末のそば会に行っていますが、その会で一年に一度会う女性がいます。何回目からか少しずつ会話をするようになり、親しくなりました。そしてその女性は何よりもそばを手繰る姿がとても美しいのです。厚かましい私はつい聞いてしまいました。そうしたら意外そうな顔をされ、返ってきた答えは「そうですか…きっとそば好きの父に連れられて子供の頃からそば屋に行っていたので、自然とそばに慣れているからでしょう」なるほど、文化度の高い家庭環境がなせる業でしょうか、憧れました。彼女の食べ方は別に何でもないのですが、背筋はピンと、少し前に傾き気味で、正しく箸を持ち、もり蕎麦の中央から4、5本をつまみ、そば猪口にちょっと沈め、すぐに口に運ぶ。これだけですがスピード感も良いし、啜る音も大きくもなく、小さくもない、そして何よりそばに向かい集中していることでした。彼女のようにそばを手繰れればルシックの認定をいただけると思うのですが。
平成28年5月20日
日本橋そばの会
会長 横田節子