長いことそばを打っているとそば打ち台にこだわってみたり、包丁、駒板も少しでも使い易いものが欲しくなります。なかでも台の高さは一番重要で、皆自分に合った踏み台を作り、高さを調節しながら練習を重ねているようです。 それなのに、今の私はそば打ち環境の整っていない状態での練習をしています。

そういえば、先日の御殿場も決して良い環境ではありませんでした。まず、延し板はしなっていて机の上に載せても少しガタガタしました。また野外でしたので、風が吹き、当日は時々凄い雨が降りました。そして延し棒は1本だけ。一瞬気持は萎えたのですが、子供たちが延し板にぶら下がるように見入っている中で楽しくパフォーマンスをすることに集中しました。出来栄えはあまり良くはなかったのですが、何とか子供たちに飽きさせないそば打ちができたと思っています。

さて、今度は仏料理学校から外国人シェフのそば打ち体験を頼まれました。興味津々で打合せに行くと、できる限り厨房にある道具を使ってほしいとの要望が出されました。相談をしていくと、料理学校なので道具はおおよそ揃っていますがどうしても代用がきかないものにこね鉢がありました。大きなボールではどうかと提案されましたが、調理台に置いてみると軽すぎて落ち着きません。麺棒、駒板、包丁も適当なものはなく結局購入していただくことになりました。さて問題は調理台です、大理石で高さが85cmと高い。奥行80cm横110cmです。さあどうするか。右隣にはガスコンロがあり、やり辛いけどここで700gのそば打ちのデモをすることになります。そこで、いつも自分の会の研鑽会をしている料理室はステンレスの調理台なのでさっそく練習をしてみました。すると生地が台に張り付いてしまい、打粉を振りながら延していくと何とかできました。次に自宅のガラステーブルの上で試してみると、少しでも打粉を控えめにするとやはりピッタリ生地がガラスに張り付いてしまいます。「これは困った」とだんだん怖くなってきて、ついに今日は現場に行って打たせてもらいました。

テストをしてみると思ったよりは張り付きませんでしたが、奥行80cmが厳しい。しかも1本でできないかと先方は提案をしてきました。「そんな無茶な!」しぶしぶ1本で延してみるとやはり延しきれない、500gならできそうですが、もうレシピが決まっているので変更することもできず、強引に2本使用にしてもらいました。通訳が入り、説明をしながらつゆを作り、そば打ちのデモをして、薬味を作り、そして茹でて見本を作る。できたらもう一品もと言われました。当初考えていたそば打ちデモとは全然違っているのです。こちらの認識が甘かったのか、もちろん私の未熟さもありますが、今寝ても覚めても頭から離れずだんだん近づく本番の日。ドキドキが止まりません。

平成28年8月24日
日本橋そばの会
会長 横田節子

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