そば打ちの心得
そば打ちを習い始め一年余りが経った時、恩師から「おいしいそばを作ろう、そば粉は大切に扱おうと思って打ちなさい」とアドバイスを受けました。この二つの思いはずっと私のバイブルとして持ち続けています。
さて、今年、大勢の方と交流し、新たに多くのことを学びました。
まず、埼玉小川道場の大塚康子さんの心得。
康子さんは清楚な中に丁寧さと隅々まで神経の行き届いたそば打ちをされる方、そのそば打ちの工程の中で、切ったそばを舟箱に入れるとき、「首のすわっていない赤ちゃんを扱うように」と説明されました。なるほど・・・。だからあのように整然ときれいに並んでいるのか・・。生そばは本当にデリケート、まして生打ちや粗挽きのそばは切れないように・・、折れないように・・と扱うもの、納得しました。
そしてもう一人、北海道そば打ちの達人平松一馬さんの心得。
平松さんは毎朝、そば打ちをするそうです。そしてそのそばは待っている職場の会員さんやご友人に差し上げるのだそうです。でも最後の二束を上手に切り上げるのは大変難しいです。しかしその二束がお二人のその日の朝食になるそうです。そこで平松さんの奥様は言いました。「私たちが食べるのだから心を込めておいしくなるように切ってください」と。私はこの言葉に感銘を受けました。達人といえども切りは最後近くになると集中力が薄れるか、「いいや自家用だから」と思ってしまうかもしれません。自分たちが食べるのだからもう一頑張り。これも納得です。
よく、<そば打ちは奥が深い>と言われますが、技術の向上は質の高い練習と思います。
でもそれだけではなく気持ちも付いていかなければ<いいそば打ち>はできないと思い知った一年でした。
平成26年12月25日
日本橋そばの会
横田 節子