高齢者施設でのボランティア活動
                          
定年退職後、縁があって介護施設で仕事を始めました。これまで未経験の内容でしたが、年配の私には高齢の利用者の方と相通じるところがあり、なかなか楽しく仕事を進めています。ところで、私の勤めている介護施設では、利用者の健康状況や安全を第一に考えるため、外出には制限があり、季節の移り変わりや自然に触れる機会が少なくなります。そこで、利用者の皆さんの生活に少しでも潤いをもてるようにと、施設運営には工夫が必要なのだと聞きました。

 あるとき、職場の方から「利用者のために蕎麦打ちをしてほしいが」と頼まれました。いつか仲間との立ち話の中で、私は蕎麦打ちが趣味だと話したことが、誰かの耳に入ったのでしょうか。

 まったくの趣味で、うまい蕎麦が食べたい一心で蕎麦打ちをしていたことが、誰かの役に立つならこれも良い機会と引き受けることにしました。ただ、私ひとりの力では100人分を打つのは難しく、「日本橋そばの会」の仲間に声をかけたところ、快く協力を頂きました。

 施設のホールに道具を広げ、こね鉢を据えて水回しを始めると、これまで表情の少なかった利用者の方々が視線を向けてきます。中には「あらなつかしいねえ」とつぶやく姿もあります。こうして始まった蕎麦打ち会も今年で6回目、いまでは、職員の方々からも「おいしかった、利用者が喜んでいましたよ」と声をかけてもらうようになりました。

 このほかにも別の高齢者施設から頼まれて年越しの蕎麦打ちが恒例となったり、地域の老人会仲間の集まりで、収穫祭と銘打っての蕎麦打ち会を楽しんだりしています。

 蕎麦打ちの趣味を持ったことで、ボランティア活動の機会が広がり、少しずつ社会や地域とのつながりも深まってきたような気がしています。

日本橋そばの会会員
根岸 利明

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