3月、“ながや 開店のおしらせ“と書かれたハガキが届きました。よく読むとフランスのパリでお世話になった長屋偉太さんからでした。住所は神奈川県小田原市早川とあります。
すぐにも行きたかったのですがぐずぐずしていて、とうとう7月になってしまいました。
「ながや」の若い店主長屋さんがパリの蕎麦屋「YEN」で修業をしていた時、私は大変お世話になりました。初めてのパリ旅行で張り切りすぎ体調を崩した私は長屋さんの作る料理に救われました。海外に行っても、その国の料理を楽しむタイプで日本料理が恋しいなんて思ったことはないのですが、あの時は胃が受け付けませんでした。よれよれの私は長屋さんが作る優しい料理でようやく食欲が戻り、後半の旅行も楽しいものになりました。翌年、またパリに行った時は私たちの戯言「日本では今、鰻が高くて食べられない」を聞き翌日、さっと仏産の鰻で鰻丼を作って下さいました。美味しかった。
久しぶりの長屋さんは全然変わらず若いのに落ち着いて再会を一緒に喜んでくれました。
こじんまりした店内は隅々までこだわり、外観とのミスマッチが返って面白く感じられました。さあ、料理を頂きます。さすがに高級料亭「吉兆」の出身とあって一つひとつ丁寧な仕事ぶりで器も季節感と面白さを併せ持って選んでいました。
会話も弾んでお酒も進み至福の時間、さて〆はもちろんそばです。
つゆは甘みを抑えすっきり、そばはもちろん師匠の高橋名人仕込みですので細くキリリとしています。もうお腹いっぱいでしたが最後に「最中」がでました。
パクッと一口かじって・・・・・・。えっこれは?ほのかな甘み感じた途端に最中の皮の香ばしさが口いっぱいに広がります。
最中の皮は和菓子屋さんから仕入れるが、餡は自分で作り、直前に皮に詰めるのだそうです。さり気なくしかも最後まで手を抜かない料理に長屋さんらしさを感じた一瞬でした。
平成27年7月10日
日本橋そばの会
会長 横田節子