恥ずかしながら今まで「オヤマボクチそば」を打ったことがありませんでした。
長野に旅行した時、北信の飯山方面まで足を伸ばし、オヤマボクチそばを食べたり、打っているところを見学させていただいたことはありますがなかなか打つ機会がありませんでした。 ところが、今回念願叶って飯山に関係あるから方から、この地方に昔から伝わる打ち方を教えていただきました。どのようになるのか期待が膨らみます。
先ずは、地元のそば粉500g、オヤマボクチ2g、水300ccを用意、水多めです。 初めてオヤマボクチに触りました。今まで葉脈を使うものとばかり思い込んでいましたがそうではなく茸毛(葉の裏に生える繊維)を集め乾燥させたもの使うとのこと、勉強不足でした。
茶色に乾燥している茸毛を水にふやかし水と一緒にそば粉の中に。しっかり「水回し」をして、じっくり「練り」上げるこの作業が一番肝心とのこと。茸毛一本一本を全体に万遍なく散らしていきます。途中うまく散っているか少し不安になりました。 さて、次は「のし」の作業、太目一本棒の「丸のし」で大きくしていきます。この時茸毛が全体に散っていないと麺体にまるでメダカが泳いでいるように現れます。 「ああ、私の麺体には2匹泳いでる~。」「大丈夫、大丈夫」と先生に励まされ気を取り直して薄く0.5ミリまで伸ばしていきました。
そしてこの麺体をしばらく乾かすのです。「えっ!乾かすのですか?」新聞紙を広げその上にそっと休ませました。すぐに切ると繊維が邪魔をして切り辛いのだそうです。 やがて周りが少し白く乾いてきたので八つ畳み、10㎝×80㎝を2㎜幅での切り、サクサクサクと小気味よく切れていきます。何とも愛おしいしそばになっていました。練り込んだ茸毛がしっかり「つなぎ力」になっているからだとひとり感心してしまいました。和紙を織る作業と同じです。
さあ、お待ちかねの試食。香しい長いそばになっています。角もカチッと立っています。平麺のそばはつゆとからみ美味しいおそばでした。 戦国時代、火縄銃の火口に使ったオヤマボクチをつなぎに使って食用のそばにする。先人の知恵に感慨深いものがありました。
平成27年2月14日
日本橋そばの会
会長 横田節子